記事まとめ
- 洋書の翻訳本である「伝える映像の設計図 ストーリーボードの教科書(グレッグ・ダヴィッドソン著)」の感想
- どのような本か?
- 映画におけるストーリーボードの作り方に関する本
- ストーリーボードは、4コマ漫画のようなイメージで、1つのシーンにおいて「全身を見せるショット」⇨「俳優の顔アップ」⇨「全身のショット」のような流れを描いたもの
- 本書の内容を一言で表現すると?
- 「視聴者が違和感を感じないようにショットを構成しましょう!」
- どのような人が読むべきか?
- 映像作品を作る際に、ショットの並べ方やショットの撮影の仕方に悩む人
- 少し辛口な感想
- 入門的な本のためか内容は薄め
- ストーリーの作り方の説明はない
- 絵の描き方の説明はない
私は今まで、一眼レフカメラやシネマカメラをほぼ使ったことがない状況で、「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(略称、BMPCC4K)」というシネマカメラを購入しました。
そして、2020年の後半に中国地方5県(広島県、山口県、島根県、鳥取県、岡山県)で撮影をして、YouTubeに動画投稿を行っています。
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いくつか動画編集をしてきて感じたことは、「ストーリー性がないと面白くないなぁ」ということです。
私の作品はすべて、風景映像を何も考えずに並べただけの作品となっています。
YouTubeの動画には、シネマライクだったり、かっこいい音楽に乗せていたりして、ストーリー性がなくても見栄えの良い映像はたくさんあります。
1分くらいのショートムービーで、カッコ良さが詰まったような作品もあります。
ただ、それらの作品よりも、やはり、ストーリーがあったほうが楽しめるなぁと最近思い始めました。
それは自分自身の作品についても同様です。
「映画」が面白いのは、俳優のかっこよさ/美しさ、映像の美しさもあると思いますが、ストーリーの面白さが大きいと思います。
最初から最後までの流れを追いかけて見ることで、自分の感情が揺さぶられ、それが楽しさに変わります。
私はこういう作品を作っていきたいと思い始めました。
そういう作品でないと、誰も見てくれないと思っています。
そのような中、手に取った本が、「伝える映像の設計図 ストーリーボードの教科書」です。
ストーリーボードというより、ストーリーという言葉に反応して購入しました。
結論からいうと、私が欲しいと思っていた「ストーリーの作り方」の情報は書かれていませんでした。
ストーリーボードという、映画の台本の一部のストーリーを4コマ漫画のようなもので表し、撮影前に「どのような構図で撮影し、どのようなショットを複数撮影してつなげるか」を把握しておくためのツールの作り方です。
ストーリー/台本は別で受け取っているという前提です。
また、ストーリーボードに描かれる絵(マンガ)の描き方が示されているわけではありません。
各ショットの構図や、ストーリーの流れとしてどのようなショットを繋げていくべきかを教えてくれる本でした。
私が欲しかった情報が載っている本ではなかったのですが、役立った情報はたくさん載っていました。
- 視聴者に違和感を与えないように、一貫性を保ってショットを繋げる
- 右に人がいたなら、次のショットでも右側にその人を配置する
- ジャンプをしたなら必ず、着地のショットを繋げる
「撮影したショットを編集時にどのように繋げるべきか」というのはいつも悩んでいました。
2020年に撮影したショットは、基本的に時系列で並べただけです。
だから面白くなかったのだと思っています。
もっとストーリーや流れを意識して撮影と編集を行うべきでした。
その際の考え方として、非常に参考になりました。
そのため、本記事では、本書で参考になった情報をまとめてみたいと思います。
目次
1. 「伝える映像の設計図 ストーリーボードの教科書」のレビュー
本書は、映画制作において、ストーリーボードを作る方法を教えてくれる本です。
ストーリーボードとは、4コマ漫画のようなもので、あるシーンについて、「どういう構図のショットにするか」「それらのショットをどのように繋げるか」を撮影前に把握することができるようになるツールです。
私は映画を作成したことはありませんが、どのような映画も、ストーリーが書かれた台本を元に、このボードが作られているのだと思っています。
撮影現場で行き当たりばったりで構図を決めたりはしないでしょう。
事前にどのような構図にしたらストーリーを伝えられるかが練られて、構図を決めてから撮影に臨んでいるのだと思います。
1-1. 視聴者に違和感を与えない
私が一番学んだことが、「視聴者に違和感を与えない」ということです。
例えば、男性から女性へ一輪の花を渡すシーンがあったとして、2つのショットが撮られたとします。
- 男性と女性の体全体が映っているショット
- 上半身だけが映っているショット(上記よりちょっとズームインしたショット)
このとき、ショット1で男性が左側にいたのに、ショット2では男性が右側に映っていたら、視聴者は、何かの不具合だろうと理解し、映画鑑賞の体験が損なわれるようです。
他にも「方向の不整合」という話もあり、馬が右側に向かって走っていたのに、次のショットで左側に走っていたら、違和感を感じます。
このように違和感を感じるような、一貫性のないショットを繋げるのはNGのようです。
私は撮影時にこれを意識したことはありませんでした。
「カッコ良い構図」ばかりに気を取られていたので、一貫性を考えて、撮影したことはありません。
鳥が左から右へ飛んでいようと、右から左へ飛んでいようと、とにかく撮影していました。
また、動画編集時にも、いくつかの撮影ショットを並べましたが、一貫性は意識したことはありませんでした。
時系列に並べただけでしたので、途中で、向きが逆になっていても気にせず編集していました。
一貫性を保つという考え方は、基本的な撮影と編集方法として勉強になりました。
違和感を感じないように、一貫性/連続性を保っていきたいと思います。
違和感を減らすテクニック
一貫性を保つ、本書では、連続性を保つという表現ですが、そのテクニックが紹介されていました。
あいだに、クッションを置くことです。
例えば、
「左から右へ走っているショット」
「右から左へ走っているショット」
という流れでは違和感を感じます。
そこで、
「左から右へ走っているショット」
「走っている対象物がいない風景ショット」
「右から左へ走っているショット」
というように、あいだにクッションのショットを設置することで、違和感を減らせるようです。
前述した、男性から女性へ一輪の花を渡すシーンも、あいだに女性のアップがあると違和感を減らせるかも知れません。
連続しているショットは一貫性を保つことを基本とし、どうしてもできない場合は、あえてそのあいだに別のショットを入れ込むことで連続性を和らげて、違和感を減らすということでしょう。
もしかしたら上級テクニックかも知れませんので、初心者の私は撮影時に、連続性/一貫性を気をつけて撮影していこうと思います。
どうしても撮影時に一貫性を保てない(対象物が動いてしまった、自分が動いてしまった)場合は、この方法を使ってみようと思いました。
ミスマッチカット
違和感を減らす方法として、ミスマッチカットという方法も書かれていました。
ショット1で、一輪バイクがジャンプしてカメラの前を左から右へ通り過ぎます。
それがショット2では一転、右からフレームインして着地した後、左へ走っていきます。
これはジャンプカットです。
それなのに、観る人はおそらくこの映像を違和感なく受け入れます。
飛び上がったバイクを見たら、次は当然、着地するだろうと期待するからです。
たとえ2つのショットの動きの方向が逆でも、着地の瞬間を見たことで、鑑賞者の期待は満たされるわけです。伝える映像の設計図 ストーリーボードの教科書
- ジャンプしたら着地する
- 左から右へ通り過ぎたら、次も左から右へ動いているはず
上記どちらも連続性ですが、どちらかの印象が強ければ、片方は違和感があるものでも気にならないということですね。
アクション映画によく使われるテクニックのようですが、私はまだ初心者なので、意識して撮影するのは早いと思っています。
ただ、こういう方法もあるし、視聴者はこういう捉え方をするということは非常に勉強になりました。
このように本書は、映画に使われているであろうテクニックが学べる本となっています。
1-2. そのショットの意図は何か?
私が本ブログで紹介した他の本でも一緒ですが、「その撮影ショットの意図は何か?」ということが大事のようです。
カメラの位置やアングルの選択は、突き詰めれば、とてもシンプルなガイドラインに行き着きます。
それは、「ストーリーを最もよく伝える」カメラアングルを選ぶことです。
ストーリーボードアーティストは常に、次のような質問を自問自答します。
「このショットの意図は?」
「それを鑑賞者に見せる最良の方法は?」
同時に、コンテンツとショットの両方の観点で、前のシーン、後続のシーンと矛盾がないことを確認します。
コンティニュイティ(連続性)の矛盾がないことは当然のこととして、魅力的なステージングとキャラクターで見る人を引き込みたいのです。伝える映像の設計図 ストーリーボードの教科書
何度も言うようですが、今までの私は、ただ単にカッコ良さげな構図を選択していました。
「観光地の現地の状況を伝えよう」という思いはありましたが、撮影方法や構図にまったく反映されていませんでした。
初心者から上級者へ上がるためには、「何を伝えたいか」「それを実現するにはどういう撮影方法や構図にすべきか」を考えることが重要だと思いました。
1-3. 本書を買う人への注意点
冒頭でも説明したように、私はストーリーボードの「ストーリー」という言葉を見て本書を購入しました。
ストーリー性があった映像作品を作りたいと思い、ストーリーの作り方を学びたかったからです。
ただ、本書はそういった本ではありません。
脚本を考える方法を学びたいのであれば、本書ではありません。
また、ストーリーボードの絵、つまり、4コマ漫画の絵を書く方法も記載されていません。
どちらかというと、撮影の構図の話や撮影したショットの並べ方の話です。
ただ、詳細な説明ではなく、入門的なさらっと読めるような薄めの本です。
私としてはもっと詳細な説明がある分厚い本でも良かったと思っています。
入門者が読むにはちょうど良いのかも知れませんが、ちょっと物足りなさを感じました。
撮影方法や構図の説明は別の本を読むべし
本書では、「超ロングショット」「ミディアムショット」などの用語が出てきて、巻末に簡単な説明があります。
ただ、撮影方法や構図を詳細に学ぶのであれば、以前紹介した「filmmaker's eye」をオススメします。
私は上記の本を読んでいたため、「エスタブリッシングショット」などの用語につまづくことなく読み進めることができました。
本書でも簡単に説明がありますが、写真などがないためイメージしにくいと思います。
ストーリーボードを作るには、撮影に関する撮影方法や構図の名前は、前提知識として知っておくべきなのだと思います。
そうでないと、台本を見ながら、どういう構図にすべきか頭に浮かびませんからね。
本書の内容が理解できないわけではないですが、構図の本を1冊読んでおくと、読み進めやすくなると思います。
2. 終わりに
私は観光地の映像作品を作ることをメインとして考えていますが、実は、映画的なショートムービーを作ることも考えています。
車とドライブが好きなので、ドライブ旅行系のロードムービーのようなものです。
観光地の映像は、ストーリー性を作るのがやはり難しいです。
そのため、ロードムービーとして、日本を旅する映画の物語にして、その中で観光地の映像を使うという程度にしようと思っています。
これであれば、ムービー自体のストーリー性は保たれたまま、日本の観光地も紹介できるので、楽しめると思っています。
とにかく楽しくなくてはダメだと思っています。
楽しい動画は、ストーリー性がある動画だと思っています。
そのストーリーをうまく伝えるために、本書で学んだ一貫性/連続性を意識した撮影と編集を実施していきたいと思います。